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ライプニッツの四則演算計算機
 

 パスカルが設計した計算機は、基本的に加算機で補数を活用して減算を行うことができた。しかし、ライプニッツはパリを訪れる以前から、加減乗除の四則演 算をこなす計算機の設計が可能だと考えていた。
 ライプニッツがパリに来た頃、パスカルの計算機に対数の円盤を組み合わせて乗算を行う計算機も存在した。ドイツのウィルヘルム・シッカルト (Wilhelm Schickard)は1623年に、ネーピアの計算棒を活用して乗除算ができる計算機を設計していた。シッカルトの計算機のことは広く知られていなかっ たが、ライプニッツは1673年2月1日に英国の王立協会で計算機の試作機を披露した時、英国のサミュエル・モーランドの計算機のことを教えられた。ライ プニッツはその直後にモーランドと面会したところ、その計算機はネーピアの計算棒を応用していた。
 ライプニッツは、クランクを回して乗除算を純粋に遂行する計算機の仕組みを検討していた。乗算は加算の繰り返しであり、除算は引き算の繰り返しなので、 ひとつのクランクの回転方向を変えれば、どちらの計算にも対応できる。平方根の開平も除算で仕組みで行うことができる。計算結果をだすまでに、場合によっ ては数百回クランクを回すことになるかもしれないが、ともかくクランクを回し続ければ計算は終わる。
 ライプニッツはこれを実現するために、円筒形のシリンダの外壁に1から9まで段差がついた金属の細い角棒を付着させた歯車を考案した。円柱の側面の半分 足らずのスペースに、螺旋階段が9ステップだけ張り付いているような形状をしている。このシリンダに隣接する歯車は、入力用の数字盤の数字に応じて前後に スライドし、連続する数字の入力を設定できるようにした。後は、クランクを1回転させると、入力した数字が9であれば9個分の歯が動き、入力数字が3だと 3個分の歯が動く。



階差ドラムの仕組み © David G. Hicks
<ステップ・ドラム図 http://www.hpmuseum.org/mechwork.htm#stepdrum>

 752 X 36の計算では、7、5、2を数字盤で指定すると、それぞれのシリンダに隣接する歯車は、毎回7、5、2の個数分の運動を伝える位置にスライドする。そし て手前のクランクを36回まわすと、答えがでる。クランクを回した数は、カウンタに自動表示される。最初のマシンでは、桁上がりが同時に発生すると、手作 業で調整する必要があった。ライプニッツは後に、各桁の桁上げと桁下げを1つ伝える2進スイッチと10進で桁送りを行うシフト機構を備えた累算器を導入 し、桁上げと桁下げを自動化して12桁までの答えを結果表示器(result register)で示せるようにした。
 ライプニッツは王立協会で木と真鍮で作った試作機を披露した後、計算機に何度も改良を重ね、1675年の初めにパリ科学アカデミーで公開実験を行った。 この実験は成功し、フランス国王、王立天文台、財務局のために計3台の計算機の制作依頼をもたらした。ただ、この計算機は大きな数の乗除算に使えるほど、 完成度が高いものではなかった。ライプニッツは1693年に、当初意図していた計算機を完成させたが、その後も8桁の数字を乗算して16桁で答えを表示で きる計算機の改良に、生涯をかけて取り組んだ。しかし、職人に恵まれることなく、満足がいく計算機を仕上げることはできなかった。
 

東京理科大学近代科学資料館 http://www.sut.ac.jp/info/setubi/museum/kannai/index.html

 商業的に成功した最初の計算機は、フランスの保険会社の社長、シャルル・ザヴィア・トマ(Charles Xavier Thomas, 1785-1870)が1820年に開発したアリスモメータで、1825年から1878年までに1,500台が販売された。ライプニッツの段差がついたシ リンダ型歯車(stepped drum)は、アリスモメータの心臓部となり、数字歯車の列の位置を可変にする仕組みが導入されて、入力した数字を10倍、100倍、1000倍にして乗 算することができた。アリスもメーターは、1930年まで製造された。その後もシリンダ型歯車は、ライプニッツの輪(Leibniz wheel)と呼ばれて、20世紀前半に製造された様々な卓上計算機で活用された。


アリスモメーター(Arithmometer 1820)


参考文献
E. J. Aiton「LEIBNIZ--A Biography」Adam Hilger Limited 1985: 邦訳「ライプニッツの普遍計画ーバロックの天才の生涯」渡辺正雄、原純夫、佐柳文男 訳、工作舎 1990
佐々木能章「ライプニッツ術ーモナドは世界を編集する」工作舎、2002











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